映画「ゼログラビティ」では、ジョージ・クルーニー演じるマットがロープを自ら外し、命を落としてしまいます。
ライアン(サンドラ・ブロック)を助けるための行動でした。
このシーンで疑問を感じたのが
「なぜマットは命綱を外す必要があったのか?」
という点です。
無重力状態であれば、ロープを軽く引っ張るだけでマットを引き寄せられそうに思えるからです。
それとも、マットに「別の強力な力」が加わっていたのでしょうか?
というわけで今回は、映画「ゼログラビティ」における「マットが死亡した謎」について考えたいと思います。
【ゼログラビティ】マットが死亡した謎を検証
なぜマットは命綱を外す必要があったのか?
この問いに対する答えを見つけるためには、人工衛星の仕組みなど物理学の面から検証する必要がありました。
マットが死亡したのは、人工衛星(=ISS・国際宇宙ステーション)の軌道上で起きた出来事だからです。
そこで僕が出した結論が
命綱を外さなくてもマットとライアンは助かっていた可能性が高い
というものです。
【ゼログラビティ】マット自ら命綱を外す必要がなかった理由
ライアンを助けるために、マットは自ら命綱を外す必要はなかった。
その理由は、マットに「慣性の法則」が働くからです。
慣性の法則が働くから
運動している物体は同じ速さで運動を続けること
ISSは秒速約7.7km(時速約28,000km)で軌道上を動いています。
そして、仮に人間がロープでISSに繋がれたとすると、当然ながら同じスピードで移動することになります。
では、ロープから手を離すとどうなるか?
置いていかれそうですが、実は手を離しても人間はほとんど同じ速度で移動します。
これが「慣性の法則」です。
たとえば時速300kmで走る新幹線の車内でジャンプする姿を想像してみましょう。
ふつうに考えれば数十メートル後ろに着地しそうですね。
だけど元の場所に着地できるのは「慣性の法則」が働くからです。
マットにも同じく「慣性の法則」が働きます。
マットが命綱を外しても、ISSと同じ「時速28,000km」を保ち続けるのです。
つまり、命綱のフックを外した瞬間、急にスピードが半減したり、逆に急加速したりすることは、物理上ありえません。
この仕組みは「VIENCE(ヴァイエンス)」さんの動画【絶望】船外活動中に命綱が切れて宇宙に投げ飛ばされるとどうなるのか?を見ると理解しやすいです。
以上を踏まえると、マットは命綱を外してもISSから遠く離れていくことは考えにくいと思われます。
【ゼログラビティ】マットが死亡した一番の原因は推進装置の無駄使い?
そもそも、マットが死亡した一番の要因は「推進装置の無駄使い」なのだと思います。
推進装置とは、ガスの力で自力移動する機械のこと。
命を守る緊急用の装備のため、別名「SAFER(セイファー)」とも呼ばれます。
映画では「推進装置のガス切れ」が原因でマットがISSに戻れず死亡したように描かれています。
しかし、そもそもマットがガスの無駄使いをしなければ最悪の事態は避けられたものと思われます。
なぜなら、推進装置は非常時以外の使用は認められていないからです。
にもかかわらず、マットは命綱を着けることなく、推進装置(SAFER)で「宇宙遊泳」を楽しんでいる様子でしたね。
SAFERはセルフレスキュー用であり、ISS組立時の船外活動では宇宙服に必ず装着する事になっています。そのため、非常時以外は使用しません。
ファン!ファン!JAXA「船外活動中に命綱が切れたらどうするのですか?」
映画の演出に水を差す形になってしまうのですが、マットが推進装置を無駄使いしていなければ、命を落とすことはなかったかもしれません。
ちなみに「推進装置のガスは実際にはどれくらいもつ?」についてですが、せいぜい2~3回の噴射が限界だそうです。
充填できるガス量には限度があり、装置があまりに大きくなりすぎても船外活動に支障が出るからです。
あくまでも「最後の命綱」という位置づけなのでしょう。
まとめ
映画「ゼログラビティ」における、マット死亡の謎について考察しました。
僕なりの考えをまとめます。
- 命綱を外さなくても、2人とも生き残れた可能性が高い
- マットには「慣性の法則」が働くためISSから遠く離れることは考えにくい
- そもそもの過ちは推進装置(SAFER)の無駄使い
とはいえ本作品はフィクションなので、細かいことを言うのはナンセンスかもしれませんね。
映像の美しさとか、俳優さんの名演技など、とても好きな作品であることは最後に付け加えておきます。