映画「幸せへのまわり道」は、美しい音色でピアノを弾いていたフレッド・ロジャースが、急に怒りをぶつけるように鍵盤を強く叩くシーンで物語の幕を閉じます。
この記事を読んでいただいている方の中には
ラストのピアノのシーンは何を意味しているんだろう?
と不思議に感じた方もいると思います。
そこで本記事では、映画「幸せへのまわり道」に関して、ラストシーンのピアノの意味について考察したいと思います。
※この記事は映画「幸せへのまわり道」のネタバレをを含みますのでご注意ください。
【幸せへのまわり道】ラストシーンのピアノに込められた意味
映画「幸せへのまわり道」のラストで、収録を終えたフレッドがピアノを弾きはじめたと思ったら、急に鍵盤を強く何度も叩きます。
このシーンには、どんな意味が込められているのでしょう?
フレッド流の「感情を制御する方法」だった
ピアノの低音の鍵盤をまとめて叩くのは、フレッドが編み出した「自分の感情を制御する方法」です。
この物語の主人公である雑誌記者ロイド・ボーゲルがインタビューをした際、フレッドは次のように語っています。
悩みのない普通の生活はありえない
感情を制御する方法はたくさんある
人や自分を傷つけずにね
粘土の塊をたたいたり
できるだけ速く泳いだり
ピアノの低音のキーをまとめてたたくとか
映画「幸せへのまわり道」より
つまり、フレッドもロイドたちと同じ怒りや悲しみを感じる「人間」であり、他の人と違うのは、沸き上がってきた感情を制御できるかできないかという点だけということです。
フレッドもただの人間
主人公のロイドだけでなく、この映画を見た多くの人は、フレッドがまるで「聖人君主」のように見えていたかもしれません。
なぜなら、フレッドは何を言われても感情を乱すことなく、ただ人の話に耳を傾け、その人の良いところを褒め称えてばかりいるからです。
しかしラストのピアノのシーンを見ると、フレッドも「ただの人間」だということがわかります。
その証拠に、フレッドの最愛の妻ジョアンは、「聖人と暮らすのはどんな気分です?」と尋ねてきたロイドに対し、次のように語りました。
その呼び方は好きじゃない
聖人扱いしたら彼の生き方が現実離れしてしまう
あれは努力と訓練の賜物(たまもの)よ
彼は完璧じゃない
短気なのよ
その怒りを抑える道を選んでる
毎日感情を制御する訓練をしてるわ
聖書を読む、泳ぐ、人のために祈る、たくさん手紙を書く
長年それを続けてる
映画「幸せへのまわり道」より
あれだけ温厚そうなフレッドが、まさか短気だったとは(笑)!
しかし、フレッドが子供向けテレビ番組「Mister Rogers’ Neighborhood」をはじめたきっかけが「テレビ業界への不満」だったことを考えると、彼はもともと短気で我が強い性格の持ち主だったのかもしれませんね。
フレッドは聖人になりたかった?
フレッド自身、自分のことを「私もただの人間だ」と語っていますが、最終的には神に近い聖人になりたいという願望を持っていた可能性があります。
実際に、フレッドはピッツバーグ神学校に通いながら、聖職者を目指していたからです。
でも、彼は生まれつき短気な性格で、怒りや悲しみに心を支配されることがとても多かった。
もしかすると、フレッドは「このままの性格では聖職者になることはできない」と考え、ピアノの鍵盤を強く叩くなどの「感情を制御する方法」を毎日愚直に実践し続けたのかもしれません。
根本的な解決方法は「許すこと」
ラストのピアノのシーンだけを見ると、低音の鍵盤を強く叩きつけることで、フレッドは単にストレスを発散しているだけのようにも見えます。
しかし、フレッドが考える根本的な解決方法は「許すこと」です。
つまり、フレッドはまず相手を「許す」と決めることから始め、それからピアノの鍵盤を叩いたり速く泳いだりといった「感情を制御する方法」を実践しているということです。
物語の中で、フレッドがメモ帳に書かれた名前を順番に読み上げながら、プールで泳いでいるシーンがありましたね。
あれは、恐らく「許す人」を読み上げていたのではないかと思います。
許すといっても、実際にフレッド怒っている相手ではなく(もしかすると本当に怒っている人もいるかもしれませんが)、どちらかといえば「神よ、悩めるものたちを許し給え」的なものじゃないかと、僕は考えています。
つまり、フレッドは聖職者の立場として、怒りや悲しみに悩んでいる人を許し、心から救いたいと思っていたということです。
フレッドは番組を通して、子どもたちに「許すこと大切さ」を伝えました。
そして、この映画自体も「許すこと」がひとつのテーマとなっています。
許すってどういうことかわかるかい?
許すことは決断すること
だれかに怒っているとき
その怒りを解くときめることだ
映画「幸せへのまわり道」より
【幸せへのまわり道】ラストシーンのピアノの意味についてまとめ
今回は、映画「幸せへのまわり道」について、ラストシーンのピアノの意味について考察してみました。
子供番組の人気司会者フレッドとの出会いを通じて、主人公のロイドは自分の苦しみから逃れる唯一の方法は父親を許すこと以外にないことに気付かされます。
そして、最後には父親と仲直りし、後悔することなく父親を看取ることができました。
僕自身も様々な感情に振り回されることが多いので、そんなときはこの映画を何回も見直し、「許す」ことを実践したいと思います(^^)。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!